
イスラエルのガザ政策をめぐり、「恥ずべき」と仏マクロン大統領が痛烈批判
対イスラエル制裁強化も視野、欧州に呼びかけ
フランスとイスラエルの関係は緊張状態が続いている。フランスのマクロン大統領は14日夜(火曜)、イスラエルのネタニヤフ首相を強く批判した。TF1テレビのインタビューで、「ガザで50万人が飢餓に苦しむネタニヤフの政策は恥ずかしいものだ」とし、「欧州はイスラエルへの制裁強化を検討すべきだ」と語った。
「ネタニヤフ政権のしている事は容認できない。水も薬もなく、負傷者は外に出られず、医師の立ち入りも認められない」とマクロン氏は指摘。また「アメリカの支えが必要だ。トランプ大統領にはレバレッジがある。私はネタニヤフ首相と言い争いもしたし、怒った事もあった。しかしイスラエルは私達には依存していない。彼らが依存しているのは米国製武器だ」と述べた。
イスラエルとフランスの緊張は、ガザ戦争開始以降さらに悪化しており、先月はイスラエルが左派色の強い仏国会議員らの訪問を直前で拒否。「私達のビザを出発48時間前に取り消すのは両国関係や我々に与えられた公的使命に深刻な亀裂を齎す」と、入国を拒まれた議員達は非難した。
その数日前、マクロン大統領は「近くフランスはパレスチナ国家を承認する」と明言。ニューヨークで開催されるフランス・サウジ共同会議で6月にも承認の可能性があるとし、「今後数ヶ月で前進しなければならない」とFrance5のインタビューで述べた。これに対し、ネタニヤフ首相は「それはテロへの大きなご褒美になる」と電話で非難。首相の息子ヤイル・ネタニヤフ氏もX(旧Twitter)でマクロン氏に英語で「Screw you(ふざけんな)」と投稿し、騒動となった。
国連安保理で大規模な対イスラエル批判
同時に、国連安全保障理事会もガザの人道状況について英国の要請で会合を開いた。イギリス、デンマーク、フランス、ギリシャ、スロベニアはイスラエルに対し、ガザへの人道支援の妨害を止めるよう求めた。国連世界食糧計画も「ガザの食料は1週間以上前から尽きている」と警告。「防げた筈の死亡例が出ている」として深刻な懸念を示した。
イギリスはまた、「政治的・軍事的目的の為、あるいは市民を危険に晒す形の支援メカニズムには賛同しない」と明言し、国連と緊急に協力して人道支援を復活させるようイスラエルに働きかけた。加えて「国際法はイスラエルに迅速・妨害なき支援許可を義務付けている」と強調。
ハマスに誘拐されたイダン・アレクサンダー氏解放については「まれにみる希望の瞬間だ。他の人質とその家族の苦しみも忘れてはならない。過去の停戦は180人以上の人質解放と大規模な支援を可能にした」と述べた。

アルジェリアの国連大使は「19か月以上に渡る『非武装市民への残虐な攻撃』、79日以上の完全封鎖。これは一時的な危機ではなく、大規模な人道的悲劇であり、全ての関与者、沈黙する者を含め巨大な道義的恥となる。現在ガザに入るのは死のみ。爆弾は自由に降り注ぎ、乳児は餓死させられている。水や薬は禁じられ、国境は閉じられ、子供達は餓死寸前だ。イスラエルは国際法に反し支援用トラックの進入を妨害している」と訴えた。
国連人道問題担当事務次長トム・フレッチャー氏も「将来、私達は何をしたのかと問われた時、『できる限りの事を言った』と答えるだけか?イスラエルは意図的に食料・水・薬・避難所を10週間以上遮断し、人口の70%が立ち退きか軍事管理下になっている。210万人が飢餓、5人に1人が餓死状態。支援物資は準備されているのに搬入できない。医療インフラは崩壊、病院も攻撃され、スタッフも不足、重傷の子供達が治療を受けられない。国連は徹底的な監督の元、大規模な支援ができるのに、イスラエルはアクセスを妨害している。現行のイスラエル側の支援メカニズムは脆弱者を排除し、市民の権利を損ない、危険をもたらす。国際司法裁判所(ICJ)はガザでジェノサイドが発生したか調査中だが、もはや遅いかもしれない」と指摘し、封鎖解除と人道支援を求めた。合わせてハマスにも人質解放を呼びかけた。
アメリカ国連大使ドロシー・シェア氏は「アメリカは全人質の解放にコミットしている。戦争は10月7日のハマスによる攻撃で始まった。ハマスは米国・エジプト・カタールが提案した停戦や人質解放案を拒否し、戦闘継続を選んだ。明日にでもハマスが武装解除し、人質を解放し、ガザから去れば終結できる。ハマスはガザ市民を人間の盾に使い、明白な国際人道法違反だ。国際社会はハマスに圧力をかけ、その専制支配を終わらせるべきだ」と述べた。
イスラエル国連大使ダニー・ダノン氏は、国連事務総長アントニオ・グテーレス氏を強く非難。「国連は失敗したと認めるべきなのに、ガザでのハマスを支援し続けている。これは中立ではなくテロ支援だ。誘拐・殺害・強姦・拷問の加害者への協力には一切加担しない」と述べた。アレクサンダー氏解放については、「拷問され、檻に入れられ、飢餓に苦しめられた。それがハマスにおける捕虜の実態だ。二度と繰り返させてはならない」とした。
イスラエルメディアはマクロンがハマスに接近しているのではないかと疑っています。
マクロン大統領はワシントンがネタニヤフ政権を抑制するよう求めているようだ。トランプ大統領は、フーシ派の停戦からイスラエル系アメリカ人人質のエダン・アレクサンダーの解放まで、あらゆる面でテルアビブを脇に置いている。
マクロンはトランプ政権に圧力をかける為か「私の仕事は、それを止める為にできる限りの事をすることだ」とマクロン大統領は述べ、イスラエルとのEU貿易協力協定の見直しの可能性も視野に入れているとも言っています。
決して外交的な言葉の戦いを避けないネタニヤフ首相は、水曜日に反撃し、マクロン大統領がハマスを支持しているとまで言い切った。
イスラエル首相府は声明で、「マクロン大統領は再び、殺人テロ組織の側に立ち、イスラエルを血の中傷で非難するという、その卑劣なプロパガンダを繰り返した」と述べた。
ネタニヤフ首相の痛烈な声明は更に、「マクロンは、イスラム主義テロ組織と戦う西側の民主主義陣営を支持し、人質の解放を求める代わりに、再びイスラエルに降伏し、テロを報いるよう要求している」と付け加えた。
NYタイムズ紙は今週、警鐘を鳴らす報告書を発表し、「ガザのパレスチナ人は、数週間以内に支援物資の配達が再開されなければ、広範囲に及ぶ飢餓に直面すると、一部のイスラエル軍当局者が個人的に結論付けている」と報じた。
報告書は更に、「ガザの人道状況を監視しているイスラエル軍の将校達は、包囲が迅速に解除されなければ、飛び地の多くの地域で、最低限の1日の栄養ニーズを満たすのに十分な食糧がなくなる可能性が高いと、最近、司令官に警告した」と述べている。
現在、米国が支援する援助計画が策定されており、ハマスが流入する援助を盗んで転売しているという告発がある中で、「孤立している」とされている。また、イスラエルが完全な包囲政策を追求し、援助を阻止していると非難する者もいる。
明らかな事は、ネタニヤフ首相が国内だけでなく、国際舞台でも益々政治的に苦境に立たされていると言う事。
これまで熱心な支持と関係を築いてきた米国でさえ、以前ほどの熱意を見せなくなっているようだ。