中国IT大手アリババが上海警察の新しい監視システムの構築を支援

 

中国でハニトラにかかっている日本人がリアルタイムで当局にその様子を捕捉されるようになるかも?

 

 

· China News

最近発表されたIPVMのレポートによると、上海警察はアリババと協力して、市内に出入りする人々を監視する為の新しい監視システムを構築しているそうです。

具体的には上海警察は、外国人ジャーナリストが新疆ウイグル自治区への航空券や列車を予約すると、当局に通知される徹底した監視システムを構築しています。

また、ウイグル人が上海に到着すると、警察に通報される仕組みになっています。このシステムは、上海のアリババ警察のクラウドに直接接続する事で実現されています。

2023年3月、上海市松江区当局は地元の業者が31万5000ドル相当の警察向け「ビッグデータ」ソフトウェアプロジェクトを獲得したと発表しました。松江市は、150万人以上の住民が住む上海最大の地区の一つです。

※IPVM(Internet Protocol Video Market)とは
ペンシルベニア州ベツレヘムを拠点とするセキュリティ・監視業界の研究グループおよび業界誌で、監視技術のレビューと報告に重点を置いています。

IPVMは2008年にハワイで創刊されました。サイトはニュース集約として始まり、その後独自の調査を行い、監視機器のレビューを独自で行うまでに成長しました。

IPVMは、2020年と2021年に、中国に拠点を置くテクノロジー企業であるAlibaba、Dahua Technology、 Huawei、 Megviiがウイグルを標的とした顔検出技術の特許を取得したことを明らかにした調査報道によって、広く認知されました。中国で使用されている監視機器に関する同社の調査は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙など、米国の主要紙によって広く引用されています。

https://en.m.wikipedia.org/wiki/IPVM

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松江警察は上海の膨大な警察データベースを整理して、様々なカテゴリーの人・事件に対するアラートを作成しています。

このプロジェクトは今のところ松江区にのみ適用されるとの事ですが、上海警察全体の「デジタル変革」の「ケーススタディ」として機能する事を目指しています。

人口2,500万人の中国最大の都市上海でこのシステムが成功すれば、他の都市も追随する可能性がある。

松江警察が開発しているアラートの一つである特殊人員審査モード は、新疆ウイグル自治区への渡航記録を持つ外国人記者に、飛行機や列車で自動的にフラグを立てるシステムを構築しています。

今までですら、外国人ジャーナリストの新疆ウイグル自治区への訪問は 難題でした。

中国外国特派員協会の2021年の報告書には、新疆への渡航や現地からの取材が「特に困難」である事が記されています。

2021年に新疆に渡航したジャーナリストの88%が、目に見える形で中国政府関係者に尾行され、多くの場合、私服の男性に尾行されたと述べている。

44%が「取材が目に見えて監視され、妨害された」と回答しています。

34%が新疆ウイグル自治区で撮影した写真や映像などのデータの削除を求められたり、強制されたりしたと。

例えば、英国テレグラフ紙の特派員は、2021年に取材中に尾行する私服警官から身体的暴行を受け、顔を殴られた事があるとの事。

国連は、新疆ウイグル自治区のウイグル族やその他の少数民族が、収容所での大量拘束など、中国政府による「深刻な人権侵害」に曝されていると述べていますが、中国政府は「すべての外国人が新疆を訪問する事を歓迎する」と主張し、新疆批判を欧米の「政治的道具」として退けています。

中国政府が新疆を取材しようとするジャーナリストに行っている監視体制や脅迫行為を見れば、中国政府の主張はあからさまな嘘で証拠隠ぺいに腐心している事が良く分かりますね。

また、松江警察が構築している26のモジュールの1つは、「上海に来るウイグル人を自動的に発見する」ことができるシステムです。

この「モジュール」の正確な運用目的は不明だが、ウイグル人は中国国内を移動する際に「高度な監視と管理」の対象となり、存在が知られると直ぐに警察から尋問を受ける事が多いとヒューマン・ライツ・ウォッチはIPVMに情報提供を行っています。

新疆以外の中国のエリアでも、ウイグル族は監視と統制を強化されてきた。ウイグル人が電車に乗ったり、ホテルに行ったり、インターネットカフェに行ったりすると、その場所を監視するシステムがすぐに警察を出動させ、尋問する事は広く知られていることです。例えば、ウイグル人は通常ホテルに泊まる事ができない。

中国警察は既に全国でビデオ解析を利用した「ウイグル警報」システムを導入しています。

その他の構築中の警報システム

その他の自動追跡されるカテゴリーには、売春婦、不法移民、麻薬密売人などの自動通報システムがあります。

海外人口の不法滞在モデル(境外人口非法居留模型)。在留許可期限切れの外国人を追跡するアラート。(不法滞在ではなくても入国している外国人を常に追跡する可能性があります)

管轄内の売春婦に対する早期警告機能(辖区卖淫人员预警功能)。2人の異性によるホテルのチェックイン記録を分析し、売春の疑いを警察に警告するものです。※これが特に興味深いです。日本人も中国本土でハニトラにかかったり、売春を行っていますが、この様子を中国当局に自動で捕捉される様になる可能性があります。

麻薬密売の疑いがある人への早期警告機能(疑似贩毒人员预警功能)。WeChatのデータを元に、麻薬密売の疑いがある人物にフラグを立てる。マリファナ、MDMAを所持していると自動検知され、終身刑にされる可能性。

ウイグル人や外国人ジャーナリストを上記のカテゴリーで括っている可能性があり、中国警察が記者やウイグル人を犯罪者扱いしているのではないかという懸念があると指摘されています。

アリババによる警察のクラウド統合

こうした監視警報システムを動作させる為に、松江警察の新しいシステムはカスタマイズされたアリババクラウド上で動作する上海の警察クラウドプラットフォーム(警务云平台)と直接接続しています。

この統合により、松江警察は上海のアリババ警察クラウド(松江地区のものだけではない)にある以下の34種類のデータにアクセスできるようになりました。

外国人に関する基本情報 / 境外人员基本信息

外国人に関するビザ情報 / 境外人员签证信息。

ホテルチェックイン 情報/ 宾旅馆入住记录

出入国情報(税関情報)/出入境信息

鉄道予約情報 / 铁路订票信息

主要大学の教職員情報 / 重点高校教职人员信息。

民航予約情報(航空券)/民航订票信息

Alibaba Cloudは、山東省青島市と四川省内江市の警察向けに同様のクラウドプロジェクトを構築しています。

 

「アリババには責任がある」: ヒューマン・ライツ・ウォッチ

ヒューマン・ライツ・ウォッチはIPVMに対し、アリババは上海松江警察とのパートナーシップを止め、他のいかなる中国政府の「警察集団監視プロジェクト」も支援しないようにすべきであると述べています。

企業は人権侵害に貢献すべきでないのは最低限のルールなので、アリババには責任があり、IPVMは同社に警察へのこのようなサービスの提供を中止するよう求めています。

IPVMは「中国における他のいかなる警察の大量監視プロジェクトも支援しないことを確認する必要があります。アリババは、すべての契約やライセンス契約、特に強力な政府との契約について人権デューデリジェンスを行い、自社の製品が人権侵害を引き起こしたり助長したりしていないことを確認する必要があります。」と述べており、この件に関してアリババを追求しています。

しかしながら、アリババは、IPVMの度重なるコメント要請に応じませんでした。

2020年にもIPVMは、アリババがウイグル人/「少数民族」認識アラートをクラウドサービスとして公然と提供し、ウイグル人を検出すると、いつでも顧客にアラートが届くようにしているのを報告しています。

当時、アリババは同社のクラウド部門が人種差別的なAIソフトウェアを開発した事を認め、「特定の民族」をターゲットにする事は「意図していない」と主張しつつ「呆れている」と述べ、その技術は「テスト環境内で」使われただけだとした。

とんでもない嘘吐き企業ですね。

アリババは去年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりに対応する為、日本で3カ所目のデータセンターを設立したと発表しています。

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ここで見てきたように、アリババは明確な人権弾圧企業である証拠があります。日本企業はこれ以上アリババに依存し協力する事は止めるべきです。

 

上海松江警察が構築しているアリババクラウドを活用した外国人リアルタイム監視システムは、日本人の中国出国禁止にも繋がります。

セーフガード・ディフェンダーズの新しい報告書「中国の出国禁止措置の拡大」では、公式データや被害者へのインタビューを元に、中国政府がいかに出国禁止措置を悪用する様になってきているかが明らかにされており、中国では少なくとも数万人が常時出国禁止に置かれていると推定されています。

これらの出国禁止措置の多くは違法であり、世界人権宣言の「移動の自由」の原則に違反していると指摘がなされており、これは、中国政府が最近出している海外投資や海外旅行に対して開放的であるというメッセージと対照的です。

ロイターが中国の最高裁判所のデータベースから出国禁止に関する記録を分析したところ、2016年から2022年の間に禁止に言及するケースが8倍に増加していたとの事。

また、中国は先月、スパイ防止法を強化し、中国人、外国人を問わず、調査中の人物に出国禁止を課すことが出来るようにしており、こうした動きを加速させている可能性があります。

Safeguard Defendersレポートでは以下のような指摘がなされていました。

・外国人は、恣意的に出国禁止の対象となったり、脅かされたりするようになっている。

・ビジネスパーソン、中国人「逃亡者」の外国人家族、一部のジャーナリストはいずれも出国禁止を言い渡されており、中国から出られず、時には数年間もその状態です。

・2022年の学術論文によると、少なくとも41人の外国人ビジネスパーソンが民間のビジネス上の紛争を理由に中国で出国禁止となっている。企業関係者が中国に拘束されている事が報道されないのは、関係する企業がそのことを望んでいるからだとも。

・中国で民事紛争にに巻き込まれた場合、出国禁止措置の対象となる可能性が高く、出国禁止措置の総数のうち、最も多くなっていると思われる。

・中国は、チベット人やウイグル人など、社会から疎外された民族を出国禁止の対象にする事を数十年間続けてきた。

・中国最高人民法院の2019年のオンラインレポートでは、2016年から2018年にかけて、34,000人の人たちが借金の返済を拒否し出国禁止になった様です。

セーフガード・ディフェンダーズの報告書によると、中国からの出国を禁じられているのは、金融紛争に巻き込まれた一般の中国人、権利擁護者、活動家、弁護士、中国北西部の新疆ウイグル自治区のウイグル族などの少数民族である。

同報告書は、2016年から2018年の間に、お金を借りたことを理由に34,000人が出国禁止処分を受け、3年前の同時期から55%増加したとする中国の司法報告書を引用しています。

一部の活動家は、出国禁止令の広範な使用は、習主席の下での安全対策の強化を反映していると述べています。

"彼らは出国を阻止する為にどんな理由でも見つける事ができる "と、2017年に中国から脱出し、後に米国で亡命を受けるまで2年間出国を拒否されていた中国の権利活動家、Xiang Liは述べています。

こうした出国禁止にも上海松江警察が構築しているアリババクラウドシステムが活躍し、売春や不法滞在をしたとみなされた日本人が出国禁止になるケースが増える可能性があります。

ハニトラにかかっているのもホテルのチェックインの時点からリアルタイムで捕捉されているので、どうなるか分かりません。