フランス大手銀行クレディ・アグリコルが、原油価格急騰により日本の物価対策は効果がなくなるのか?について返答

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質問1

米国とイスラエルがイランに対して大規模な攻撃を実施しました。イランはこれに対し、UAE(アラブ首長国連邦)やサウジアラビアなど、米軍が駐留する湾岸諸国に報復攻撃を行い、石油・天然ガス施設に損害を与えました。

日本政府はこの事態が長期化する恐れがあると懸念しています。

日本は原油の90%超を輸入に依存しており、そのうち約80%がイランに面した要衝・ホルムズ海峡を経由して輸入されています。
原油価格の急騰によるエネルギー価格上昇の影響をどのようにお考えですか?

【見解】

日本はエネルギー自給率が極めて低い国です。原油価格が大幅に上昇すれば、海外への支払いが増加し、国内経済を冷やすリスクが生じます。

国内需要が低迷していたとしても、企業はエネルギーコストの上昇を製品価格に転嫁します。これにより、望ましくないコストプッシュ型のインフレが引き起こされます。生活費が上昇すれば、消費者は購入量を減らします。その結果、企業収益に下押し圧力がかかり、ひいては賃金にも悪影響が及びます。

たとえインフレがコストプッシュ要因に起因するものであっても、日銀が拙速な利上げによってこれを抑制しようとすれば、企業が投資を削減するおそれがあります。それは将来の供給能力を損ない、最終的には国の経済力を低下させる事になります。

質問2

資源エネルギー庁によれば、日本の石油備蓄量は昨年12月末時点で254日分に相当するとの事であり、直ちに供給が途絶えるわけではありません。しかし問題は価格です。原油価格の主要指標である米国WTI先物価格は一時1バレル77ドル台に達し、約8か月ぶりの高値を記録しました。来週以降、国内のガソリン価格への影響が顕著に表れる事が見込まれており、実体経済への影響が懸念されています。
原油価格が1バレル80ドルを超えた場合、日本経済は景気後退(リセッション)のリスクに直面しますか?

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【見解】

原油価格が20%上昇した場合、日本の実質GDP成長率は約0.3ポイント押し下げられると試算されます。日本の潜在成長率、すなわち経済の基礎的な成長力はわずか約0.4%程度にすぎません。その結果、経済成長の余地はほぼなくなります。

景気後退リスクが高まっていると判断された場合、政府はFY2026年度予算が国会で可決され次第、速やかに補正予算を編成して経済対策を講じる可能性が高いと考えられます。FY2026年度予算に計上されている予備費は1兆円にとどまります。

仮に今年第1四半期に実施された電気・ガス料金負担軽減措置と同規模の支援策を今夏に講じた場合、その総額は約5,000億円に上ると見込まれます。その他の追加施策や災害対応経費への備えも勘案すると、家計を十分に支援するためには補正予算の編成が不可欠になると考えられます。

質問3

米国・イスラエルによるイラン攻撃を受けて原油価格が急騰しています。高市政権が物価高対策を打ち始めているなか、原油価格の上昇によってこれらの施策の効果は実質的に帳消しになってしまうのでしょうか?

【見解】

ガソリンの暫定税率は1月に廃止されました。また、1月から3月にかけてエネルギーコストに対する補助金も交付されてきました。これらの施策がなければ、原油価格の上昇はすでに日本経済を景気後退に追い込んでいた可能性が高いと考えられます。

実際のところ、これら初期施策の効果は、最近の原油価格上昇によって既に大半が相殺されたと見なすべき状況です。

エネルギー価格の上昇は、おおむね3か月から6か月のタイムラグを経て、物価全体を押し上げる傾向があります。原油価格が高止まりした場合、政府は今夏に見込まれるエネルギーコストの大幅な増加に対応すべく、追加施策を講じる必要に迫られるでしょう。

また、食料品に対する消費税率の引き下げについても、FY2027年度から実施する予定を前倒しし、FY2026年度中の実現が求められる事態となる可能性があります。消費税引き下げへの反対論は急速に後退していくと見込まれます。

質問4

米国・イスラエルの攻撃とイランの報復行動によってエネルギー価格の上昇が続けば、日銀の追加利上げの判断にも影響が及ぶ可能性があります。先行き不透明感が高まったことから、追加利上げは更に遠のいたと指摘する市場関係者もいます。このご見解はいかがでしょうか?

【見解】

3月4日の国会審議において、日銀の植田和男総裁は、原油価格の上昇が交易条件を悪化させ、「経済と基調的なインフレ率に下押し圧力を及ぼす可能性がある」と述べました。高市政権は日銀に対し、物価安定の達成と力強い経済成長の維持という二つの責務を課しています。

コストプッシュ要因が物価上昇を促す一方で、経済成長の鈍化リスクが高まっているという状況下においては、日銀の追加利上げがさらに遠のく事は、自然な帰結と言えるでしょう。

質問5

高市早苗首相は「責任ある積極財政」を掲げています。原油高が長期に渡って続いた場合、どのような対応が求められるとお考えですか?

【見解】

企業が投資を削減し、将来の供給能力が失われ、国の経済力が更に弱体化するという事態を回避する事が不可欠です。

供給能力はインフレ圧力を安定させる上で重要な役割を果たします。日本は、官民の成長投資や危機対応投資を拡充することで、エネルギーコスト上昇に対してより強靭な経済基盤を早急に構築していかなければなりません。

こうした投資が成果を上げるまでには時間を要する事から、政府はその間、減税や現金給付を始めとする積極的な財政政策を通じて、家計を支援していく必要があります。家計の貯蓄率は史上最低水準にまで低下しており、家計の財政状況は極めて厳しい状態にあります。

「財政余力がない」という理由で家計支援策を講じられないという過度な緊縮思考から脱却できなければ、政権に対する国民の支持を失うリスクがあります。