
ドイツ政府は現在、重大な国際的課題に直面しています。
ウクライナ戦争、予測不能な協力相手であるホワイトハウス、中東の混乱、そして台頭する中国との経済競争——これらは全てメルツ首相が直面する難題です。メルツ首相は外交政策を自らの重要課題と位置付けていますが、どのような手腕を見せるのでしょうか?
まず、ドイツはアメリカとどう向き合うべきなのでしょうか。
メルツと外相ヨハン・ヴァードフは異なる戦略に取り組んでいます。
彼らはアメリカ大統領に対し、ドイツは世界においてより多くの責任を担う用意があるというメッセージを発信しています。
この文脈において、ドイツはNATOの2%目標を達成するだけでなく、それを大きく上回る用意も示しています。
現在、防衛支出を5%にまで拡大するとの噂もあり、3.5%は直接的な防衛費、1.5%は橋梁など防衛関連インフラの整備に充てるという内訳が取り沙汰されています。
この数値が現実的かどうかはまだ不明ですが、より重要なのは、トランプ大統領に歩み寄る事のようです。
メルツ首相がトランプをドイツに招待し、その際にトランプの祖父母の出身地であるプファルツ地方に立ち寄るよう提案した事も、その一環とされています。
キリスト教民主同盟(CDU)党首であるメルツは、最初の政府声明において「西側諸国が分裂する事は決して許されてはならない」「私は今後もヨーロッパとアメリカのパートナーシップの最大限の結束を確保する為に、あらゆる努力を続けます。」と発言。
そして中東はドイツ政府にとって最も困難な外交課題です。
メルツ首相は「イスラエルは我々が非常に重視する問題だ」と述べています。
イスラエル政府は、ハマスによる長年に渡るテロ活動と2023年10月7日の大虐殺への対応として、ガザ地区への戦争を開始しましたが、状況は最も冷静な観察者でさえも恐れさせるほどになっています。
民間人の苦難は日増しに深まり、同時にネタニヤフ首相周辺の連立勢力は、沿岸地域の恒久占領の意思を益々公然と示しています。
ドイツ前外相ベアボックは最近、イスラエルに厳しい批判を繰り返しました。
後任のヨハン・ヴァードフも外相として最初のイスラエル訪問時、発言のバランスを取ろうとしています。彼はガザの市民が苦しみに晒されている事を忘れてはならないと警告し、二国家解決が依然として目標であるべきだと強調しましたが、ネタニヤフもハマスもその解決策を拒否しています。一方で、イスラエルとの団結を明言しました。
中東政策が実質的に転換するとの期待は薄いようです。
ウクライナ問題をめぐっては、メルツがキエフでフランス、イギリス、ポーランドの首脳と共に並ぶ姿は非常に印象的でした。
「自発的同盟」はウクライナ戦争を終結させるため外交努力の強化を模索しています。
この試みはアメリカとも調整されており、メルツ首相は「これはここ数ヶ月、おそらくここ数年でウクライナ戦争の終結に向けた最大規模の外交的取り組みだ」と強調。
しかし、今のところ大きな成功は見られていません。
アンカラでの交戦当事者の会合も、突破口とはなりませんでした。メルツにとって、ウクライナへの姿勢は確かに危ういバランスを伴っています。
一方で、前任のオラフ・ショルツよりも強い決意を見せたい考えですが、最終通告を突きつけるならば、その結果に責任を持つ必要も出てきます。どこまでリスクを冒す用意があるのでしょうか。メルツはこう述べています。「我々は戦争当事者ではなく、戦闘に加わる事もない。しかし、まったく傍観者でもなければ、中立な調停者でもない。」論点はタウルス巡航ミサイルの供与だけではありません。
もしロシアとウクライナがいずれかの平和合意に達した場合、それを保障するのは国際部隊となる筈です。
そして中国はドイツ企業にとって最も重要な市場とされています。
メルツが首相に就任した際、北京は友好的なメッセージを発しました。
習近平は「中独戦略パートナーシップの新しい章を共に開く準備ができている」と書簡で伝え、ともに「嵐や困難な天気に立ち向かおう」と呼びかけました。
しかし、嵐の気配は強まっています。
明らかなのは、その嵐はワシントンから来ていると言う事です。
トランプは関税問題で中国に強硬姿勢をとっており、習近平は同盟相手を求めています。実際、中独経済関係は非常に密接です。
連邦統計局によれば、2024年、中国はドイツにとって第2位の貿易相手国でした。
しかし、この二大経済大国の貿易関係では、中国からの安価な輸入品やドイツ企業の中国市場参入の難しさがしばしば混乱を招いています。
また、人権問題は前政権時代に緊張を引き起こしました。
メルツ政権は中国を「体制上の競争相手」と位置付け、中国とロシアの関係の親密さにも懸念を表明しています。
中国への強硬姿勢ではワシントンとの連携も重視する見通しです。
選挙戦期間中、メルツは中国批判を行い、ドイツ企業に対して中国投資の慎重さを促しました。メルツは1月、「我々の基準からすれば、中国は法治国家ではない」と発言しましたが、経済界はこうした発言にはあまり乗り気ではありません。
AFP通信によると、メルツの初の政府声明における対中政策は矛盾を孕んでいます。メルツは中国がドイツにとって「重要なパートナー」であり続けると強調する一方、「戦略的リスク最小化」方針を堅持し、中国への経済的依存を減らす事を目指すとしています。
石破氏が格下の担当大臣を立ててのらりくらりと米国との関税協議をしている中、ヨーロッパはスピーディに動いています。