
現在、構造的な問題によって中国企業全体が苦戦しています。中国の殆どの会社では利益予想の下方修正が続き、売上高成長率はマイナスに転じ、インフレ率はデフレ圏で推移し、ROE(自己資本利益率)も低下。
2015年以来初めて設備投資(CAPEX)が減少に転じ、不動産開発業者の過半数が赤字に陥っています。これは単なる景気循環的な軟調さではなく、構造的な問題ですので回復する事はありません。
ゴールドマンサックスは今後の中国株に対して弱気の見通しを出しています。

出典:Goldman
「中国の上場企業の株価動向を示す代表的な株価指数MSCIチャイナ(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが算出・公表している中国株市場に連動する株価指数)の25年~26年のEPS成長率(企業の収益力を示す 一株当たりの純利益の成長力)予想を6%/7%としています。これはコンセンサス予想の8%/13%を下回ります」」
幅広い分野で中国企業の弱さが目立ちます。
テック企業以外は全然ダメですね。

出典:FactSet
日本メディアは中国の調子がいい企業(EVのBYDやDeepSeek等のAI企業、一部のロボット企業)の様子のみをチョイスして報道。
中国企業の売上高成長率は減速し、2010年以来初めてゼロを下回りました。

出典:Wind
去年マイナスになってますね。これは過剰生産と各国の制裁が効いてきた結果かもしれません。
中国本土での需要不足
4月も中国本土の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の両方のインフレ率が再びマイナスになりデフレになっています。
- CPI(消費者物価指数): 消費者が購入する商品やサービスの価格変動を示す指標。
- PPI(生産者物価指数): 生産者が受け取る価格変動を示す指標。
中国のCPI(消費者物価指数)総合は前年比-0.1%でした。これは、平均的な消費者が購入する商品やサービスの価格が、1年前と比べて全体的に0.1%下がった事を示しています。つまり、デフレ傾向にあるという事。
原油価格が下落した事が、CPI全体の低下に影響を与えています。エネルギー価格はCPIに大きな影響を与える為、原油価格の下落はCPIを引き下げる要因となります。
コアCPIとサービスCPIも低迷。
原油価格の影響を除いた、コアCPI(エネルギーと食品を除いたCPI)が+0.5% YoY、サービスCPIが+0.3% YoYと低い数値を示しています。これは、経済全体にわたって物価上昇の勢いが弱い事を意味します。サービスCPIの低迷は、特に経済活動の鈍化を示唆しています。
コアCPIとサービスCPIの低迷は、経済に大きな「slack(たるみ)」がある事を示唆しています。ここでいう「slack」とは、経済全体の供給能力が需要を下回っている状態、つまり、労働市場や生産設備などが十分に活用されていない状態を指します。需要が低い為、企業は価格を上げるのが難しく、それが低いインフレ率に繋がっています。
過剰生産と高い失業率、不動産バブル崩壊とトランプ関税により庶民が貧しくなった結果です。

出典:NBS
ROEも低下
上場企業全体(金融・不動産除く)の総合ROEは2024年に7.0%まで更に低下しました。

出典:Wind
2024年における「全上場企業(金融・不動産を除く)」のROE(自己資本利益率)が更に低下し、7.0%になった事は、前年よりも中国企業全体の収益性が悪化したことを示唆しています。
ROE(Return on Equity、自己資本利益率)は、株主が出資した自己資本に対して企業がどれだけの利益を上げているかを示す指標です。数字が高いほど、効率よく利益を上げている事を意味します。
設備投資成長率もマイナス
2015年以来初めて設備投資成長率がマイナスに転じました。

出典:Wind
中国のアキレス腱
不動産開発業者の赤字企業数が業界全体の60%に達しています。

出典:Wind
中国政府が事業を所有・運営する事自体の限界が来ているかもしれません。
中国企業の収益の伸びは主に国有経済によって足を引っ張られています。

出典:FactSet
これまで強みだった中国政府による中国企業の支配が、今は逆に弱みに変わりつつあります。
中国は依然として米国の需要を必要としています。

出典:TS Lombard
中国が主要技術をリード

トンネルの先の明かり…中国企業は現在、世界のEV市場の58%を占め、太陽光発電分野でも優位を誇り、「中国製造2025」戦略によって主導されています。ここが崩れれば更に状況は悪化するでしょう。。