
GSが主に現在のアメリカ株式市場におけるヘッジファンドの現在の行動とポジションの変化について解説しています。
- ヘッジファンドの行動の転換
最近までヘッジファンド(大口投資家やプロの投資運用会社)は、アメリカ株を売ったりショート(空売り)していました。 - 一方、個人投資家は色々な株を買って盛り上がっていました。
- ところが最近に入り、ヘッジファンド達が「パニック買い」=慌てて株式を買い戻し始めました。
- 5週連続で株を買い越し
ここ5週間、彼らはアメリカ株を買い越しており、買いの勢いがショート(売り)よりも約3倍強い状態。 - レバレッジの変化
「グロスレバレッジ(総レバレッジ)」=ヘッジファンドがどれだけ大量の資金(借金も活用しながら)で投資しているかの指標についてですが、これが歴史的に高水準でした。 - しかしこの1週間でやや減少(=リスク量をちょっと減らした)。ただ依然としてかなり高い水準にはあります。
「ネットレバレッジ」について。これは買いポジションから売りポジションを引いた純粋なリスクの取られ方の目安となりますが4週間連続で上昇しました。 - ロング/ショート比率の回復
「ロングショート比率」とは買いと売りのバランスを見る指標ですが、これが少しずつ回復しており、2ヶ月前の異常に売り込まれていた状態(ある意味で底)から切り返しが出ています。
全体的には
- ヘッジファンドはこれまで売りや空売りで防御的でした。しかし株価上昇に遅れがちとなり、「上昇相場に乗り遅れるな」とパニック的に買い戻しと新規買いを進めています。
- 結果、これまで売り込まれていた株(=ショートが多かった銘柄)が買い戻されて急騰し、逆に「人気・定番銘柄」は軟調、という"逆回転"が起こりました。
- 市場のモメンタムが大きく転換し、リスクオン相場(強気相場)が一段と進んでいる局面といえます。
投資家の心理でいえば、「我慢してたけど、もう限界。みんなが買って上がるなら、自分も買わなきゃ」と考えて一斉に買いに回ってきた、そんな状況だと解釈できます。
詳細
マクロ商品(インデックスおよびETFの合算)は、総純買い越し額の23%(標準偏差+0.4)を占め、ショートカバーとロング買いによって主導されました。
3週連続でショートカバーが続いた後、米国上場ETFのショートは今週+0.2%増加しました(月間では依然として-15.7%減)。
その内訳は、主に大型株ETF、工業株ETF、社債ETFでの新たなショートが見られた一方で、テクノロジーETFではショートカバーが進みました。
個別株は5週連続で純買い越しとなり、総純買い越し額の77%(標準偏差+1.6)を占めました。
これは、ロング買いがショート売りを2.2対1の割合で上回った事によります。
米国の11業種のうち8業種で純買い越しとなり、金額ベースで見れば情報技術、ヘルスケア、工業、エネルギーが主導しました。一方で、コミュニケーションサービス、素材、公益事業は純売り越しとなりました。

米国の工業セクターは、標準偏差(SD)ベースで最もネット買い越しとなったセクターであり、過去7か月で最大のネット買い(+1.7SD)を記録しました。
これは、ロング買いがショート売りを大きく上回ったこと(3.7対1)が主な要因です。
現在の米国の工業セクターへのロング買いは、過去約4年間で最大規模となり、過去5年で99パーセンタイルに達しました。とりわけ、陸上輸送、航空宇宙・防衛、商社・流通、プロフェッショナルサービスが主導しました。

ヘッジファンドは、6週連続で米国のヘルスケア関連株(医療系の株)を買い越しています。
ヘルスケア銘柄の中でも最も買われたセクターは バイオテクノロジー(Biotech)、製薬会社(Pharmaceuticals)、医療サービス・プロバイダ(HC Providers & Services)でした。
逆に売られているセクターは ヘルスケア機器・消耗品(HC Equip & Supplies)やライフサイエンス・ツール(Life Sciences Tools & Svcs)でした。

米国のインフレの様子は?

2024年以来初めて、NY連銀の消費者期待調査で追跡されているインフレ期待がすべての期間で5月に下落しました。1年先のインフレ期待は0.4%低下し3.2%となり、3年先のインフレ期待は0.2%低下して3.0%に、5年先のインフレ期待は0.1%低下し2.6%となりました。
トランプ関税によるインフレへの影響懸念が緩和しています。