
一昨日発表されたADP雇用統計が予想外に悪く、3万3千人減少した事を受けて、昨夜の米国マーケットは更なる環境悪化を警戒していました。
昨夜発表された雇用統計の予想(市場関係者内の控えめな予想)は9万6千人と、10万人を下回る見通しが出され、コンセンサス(市場予想)の10万6千人も下回る状況。中にはスタグフレーション不況の中でどのように取引すべきか提案もなされていました。
しかし蓋を開けてみると、今回もADPの数値は当てにならないものでした。
以前も記事にしましたが、ミシガン大学消費者態度指数並みに信用が失墜しています。
実際に発表された労働省(BLS)が発表した雇用統計は「驚異的」と呼べる内容だったからです。
6月、アメリカは14万7千人の雇用を新たに創出し、コンセンサス予想の10万6千人を大きく上回りました。また、5月分も14万4千人へ上方修正されています。
予想を大きく裏切るポジティブな結果となりました。

ブルームバーグが調査した79人のエコノミストの中でこの展開を予想したのは、スコシアバンクのデレク・ホルト氏ただ一人でした。同氏は16万人(160,000人)を予想しましたが、他の全員は14万7千人(147,000人)未満の予想でした。

驚くべき事に、そしてバイデン政権下でのこれまでの傾向とは劇的に異なり、前月分の数値が上方修正されました。4月は1万1,000人増加し、14万7,000人から15万8,000人に、また5月は5,000人増加し、13万9,000人から14万4,000人となりました。

見出しの数字自体が予想を上回っただけでなく、更に驚きだったのは失業率が4.2%から4.1%に低下した事で、市場が予想していた4.3%への上昇を否定し、また、FRB(米連邦準備制度理事会)が最近上方修正した4.5%という見通しを大きく下回る結果となりました。

主要な労働者グループの中で、黒人の失業率は6月に6.8%となり、過去4年間で最も高い水準に跳ね上がりました。
一方で、成人女性(3.6%)および白人(3.6%)の失業率は低下。
成人男性(3.9%)、ティーンエイジャー(14.4%)、アジア系(3.5%)、およびヒスパニック系(4.8%)の失業率については、この1か月間で殆ど変化が見られませんでした。

インフレを懸念しているFRBにとって、更なる良いニュースがありました。平均時給の前月比の伸びは0.2%にとどまり、市場予想の0.3%を下回り、前回の0.4%からも減少しました。一方、前年同月比の賃金上昇率は3.7%となり、これも下方修正後の前回値3.8%や市場予想の3.8%を下回る結果となりました。

政府部門の雇用は、6月に7万3千人増加しました。
州政府の雇用は4万7千人増加し、このうち4万人は教育部門での増加でした。
地方政府の教育分野でもプラス2万3千人と堅調な増加傾向が続いています。
連邦政府では7千人の雇用減となり、1月の直近ピーク時から比べて6万9千人減少しています。
連邦政府の雇用減少が続いている事が特に良いニュースと言えるでしょう。

鉱業、採石業、石油およびガス採取業、建設業、製造業、卸売業、小売業、運輸倉庫業、情報通信業、金融業、専門職・ビジネスサービス、レジャー・接客業、その他のサービス業など、他の主要な産業においては、今月の雇用者数に大きな変化は見られませんでした。

以前は、BLS(米労働統計局)がヘッドラインとなる雇用者数をパートタイムの増加によって実際よりも良く見せる事が知られていましたが、今回はそうではありませんでした。フルタイム労働者は28万2千人増加した一方で、パートタイム労働者は36万7千人減少しました。

最後になりましたが、最も重要な点として、米国出生の労働者の数は83万人増加し、過去最高の1億3,265万3,000人となりました。一方、外国生まれの労働者は34万8,000人減少し、3,123万1,000人となり、今年の最低水準となりました。
トランプの不法移民追放が効いていますね。羨ましい!

全体として、今回の雇用統計は期待を上回る非常に良い結果となりました。その影響で、利回りやドルが急騰し、(政治的思惑の入ったADP指標にまたしても市場が振り回されましたが)、7月の利下げの可能性はほぼ消え、2025年以降の利下げ観測も急速に低下しています。
