台湾侵略が中国と世界に及ぼす非軍事的影響について、米CSISの分析 

日本に直接影響がある

 

2022.11.22

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これは人民解放軍が台湾侵略をしたらどうなるかというゲームの動画ですが、こうならない事を願うばかりです。

中国共産党が台湾侵略を行った際に、世界経済や中国自体にどの様に影響があるのかをCSISが分析をしており、その際は日本にとっても甚大な影響がありますし、大変参考になりますのでご紹介致します。

CSISとは、ワシントンに本部を置くアメリカのシンクタンクで、超党派の外交政策シンクタンクでもあります。ジャパンハンドラーと言われる事もありますが、国際情勢の分析については非常に優れており、日本人には無い着眼点で語られている事が多いです。

ここでは中国による台湾侵略が世界に及ぼす経済的な影響などについて、どんな分析をしているか要点を見てみましょう。

CSISは、例え人民解放軍が台湾を「首尾よく」占領したとしても、この行動は北京にとって厳しいものになるだろうと指摘し、中国は制裁を受け、主要な先進国から外交的および経済的に孤立し、習近平は中国と中国共産党全体に対する悲惨な結果を避ける為に、蕀の道を歩まなければならなくなるだろうと予測しています。

ここ数年、北京が台湾侵略計画を加速させているという憶測が高まっていますが、北京が台湾に対して軍事作戦を実行する理由はいくつかあります。

1. 長年に渡る台湾統一という国家のアイデンティティーへの願望
2. 習主席自身の個人的な野心と、台湾併合を自身のレガシーとしたい願望
3. 米台防衛協力強化を見ての焦り
4. 台湾から中国の挑発への対応、特に正式な中国からの永久独立宣言を潰したいという願望

習近平は先日の第20回党大会にて、台湾問題を解決し祖国の完全統一を実現する事は、党の揺るぎない歴史的課題であり、すべての中国人の共通の願いであり、台湾統一は中華民族の偉大な再生の為の必然的条件であると強調しています。

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http://www.gwytb.gov.cn/xwdt/zwyw/202210/t20221018_12479466.htm

こうした動機で台湾とその周辺で中国共産党が紛争を起こす事は、直接的および間接的に、中国共産党にとって大きな経済的、財政的、外交的、および評判上のコストを伴う。

中国が台湾侵略に勝利し、この地域を制圧する事で軍事的利益(日本や在日米軍へのアドバンテージなど)を得たとしても、中国の経済的および外交的地位は大幅に悪化する可能性が高い。

平たく言えば、中国は台湾を獲得したとしても、グローバルで包括的な超大国になるというより大きな野望を犠牲にする事になります。世界の指導者になるという習近平の野望が台湾侵略で座礁すると言う可能性。

中国は、習近平国家主席の大国外交と世界のリーダーとしての野望を示す新しいキャンペーンに乗り出しています。人民日報が「世界はかつてないほど中国に関心を持ち、中国を必要としている」と報道するレベルです。


米国の介入がなくても、中国によって開始された紛争は中国の輸出入能力、国内金融市場、企業の心理状態、通貨の為替レートに即座に劇的な悪影響を与え、米軍が台湾侵略に介入を行えば、たとえ数日あるいは数週間遅れたとしても、中国にとってコストは大幅に増加するだろう。

中国にとっての地理的真実、台湾海峡での紛争は、経済的に最も重要で人口の多い省(広東省や福建省)の沖合で紛争が直接発生するという事です。

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人民解放軍が台湾の防御を突破できたとしても、中国自体が深刻な経済的および外交的影響に直面した状態で、半導体部門を含む地元経済が崩壊し敵対的な人間しかいない地域を占領する事になる。

中国による台湾への攻撃の影響は、中国、米国、そして世界にとって破滅的なものになるだろうと結論づけられていて、簡単に言えば、武力によって台湾を「再統一」しようとする試みは、現在の西側諸国と中国の「部分的なデカップリング」の規模をはるかに超えており、世界の地政学と経済を破壊し、中国経済の長期的な没落を加速させる可能性があります。

中国が台湾侵略を開始したらどのような影響があるのか? 

進行前、侵攻開始、侵攻後の予想

フェーズ 1: 中国が台湾侵略に具体的な動きを見せた時

米国は中国の軍事的な動きを警告し始め、同盟国を結集させ始める。

中国に進出しているグローバル企業や投資家は、非常に不確実な環境の中で極めて重大な判断を下す必要に迫られる。

国際金融市場が最初に反応し、中国の資産と人民元の為替レートに強い下方圧力がかかる。

台湾への攻撃の範囲と規模を含め、北京の真意はまだ完全には明らかではない為、中国、台湾、またはより広い地域で事業を展開する多くの企業は「様子見」のアプローチを採用するでしょう。

フェーズ 2: 台湾侵略開始後

台湾をめぐる紛争は世界経済を荒廃させるだろうが、その代償は中国にとって特に高くつく。

経済への悪影響は、侵略行為が始まると直ぐに感じられるでしょう。

交戦地帯や近くの港を通る商船はいなくなり、多くの商品のサプライチェーンが機能しなくなり、金融市場はパニックに陥る可能性があり、2008 年の世界的な金融危機よりも深刻な状況に陥る可能性があります。

北京は資本規制の強化、資産の海外への売却、緊急物資の備蓄、輸出の一時停止、主要輸入品の配給、海外旅行の制限などの緊急経済対策を課す可能性が高い。

台湾軍が早期に抵抗すれば、中国は東部の省や人口密集地にある自国の軍事資産を、台湾や米軍からの空爆やミサイル攻撃から守るために、経済的に破壊的な措置(都市機能停止という意味合いかもしれません)を取り守らざるを得なくなるだろう。

※参考 台湾対岸にびっしりと展開された人民解放軍の基地の詳細な位置です

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米軍の関与が最小限のレベルであっても、この重要な地域を著しく混乱させるでしょう。

RAND Corporation による 2016 年の調査では、米国と中国の間の 1 年間にわたる戦争により、中国の GDP が 25 ~ 35% 減少し、米国の GDP が 5 ~ 10% 減少すると推定されています。

ただし、この調査ではグローバルサプライチェーンへの影響を調べたり、制裁、インフラストラクチャの損傷、またはサイバー攻撃の影響が含まれていません。

戦争は、台湾に最も近い中国の 3 つの省 (広東省、福建省、浙江省) に直ちに影響を与えるだろう。ただし、内陸部は国内のサプライチェーンの複雑なネットワークの一部である為、被害は沿岸部に限定されず中国全土に広がる可能性があります。

戦争地帯の範囲内のほとんどの海上貿易と航空貨物は混乱するでしょう。

国際的な海運および物流会社は、紛争地帯を迂回するルートを変更しようとし、台湾またはその近くの港に入る事を避けます。←日本への貨物は台湾海域を通ってきていますので、日本への物流も遮断されますね。

これが安倍さんが「台湾有事は日本有事」と仰っていた理由です。

※参考 台湾を失うことは日本を失うことを意味します

台湾海峡は、ヨーロッパと中東から伸びる日本への海上ライフラインであり、人民解放軍(PLA)の調査に基づくと、日本は石油輸入の90%、鉱物資源の99%、核燃料の100%を受け取っています。

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運送保険料が急増する。

中国の港は、2020 年に世界最大の 100 の港の中で出荷量の約 40%を占めていました。

中国の最大の港のうち 6 つは台湾の近くにあり、中国の攻撃によって直接影響を受ける可能性があります。

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☝2020年中国沿海港口码头泊位数量、在经济中发挥的重要作用及带动沿海地区经济发展的有效策略分析より、中国沿岸の主要な港の位置図です

世界のコンテナ船隊のほぼ半分と、大型船の 6 分の 5 が台湾海峡を通過しており、その殆どが中国が台湾侵略を開始する事により航路変更されます。

中国の貿易が完全に混乱すると、世界の付加価値貿易は 2 兆 6,000 億ドル(367兆円程度)、つまり世界の GDPの3%が減少。

この数字は、世界のサプライ チェーンの平時の評価に基づいており、貿易に対する一次効果を捉えているに過ぎません。しかし、短期的には、商品や供給品の既存の在庫が、グローバル企業や消費者への影響を緩和するでしょう。

紛争の初期段階であっても、多国籍企業は、中国での事業の縮小を開始するという大きな圧力に直面します。

中国の攻撃から何日もの間、最も重視されるのは従業員の安全であり、多くの外国のMNC(複数の国に拠点を立てる多国籍企業のこと)は外国のパスポート所有者を助け出そうとします。

中国東海岸近くで操業している企業は、サプライ チェーンの混乱が発生しなくても操業を停止する可能性があります。

中国から部品を輸出または調達している多国籍企業は、生産を他の場所に移そうとする可能性がありますが、これには費用がかかり、限られた代替能力で同じ事を行っている他の企業との競争が発生します。←この期に及んで・・・今から準備した方がよいですよね。

中国国内市場へのアクセスの為に中国で事業を行っている多国籍企業は、撤退を試みる可能性が最も低いでしょう。

工場や小売店などの直接投資は、危機の際に清算する事は困難です。

そのような企業は、悲惨なシナリオであっても、少なくとも紛争後は、中国市場は依然として巨大であると結論付けるかもしれません。

しかし、西側諸国に敵対する中国に留まれば、中国当局による資産の流用や、他の市場での評判の損失を恐れなければなるだろう。

台湾の経済は崩壊し、ほとんどの貿易から切り離され、世界の半導体とマイクロチップの大部分を輸出する能力を失うでしょう。そのインフラの多くは、戦闘により損傷を受けます。

台湾の港は十分に戦闘地域内にある為です。

これにより、台湾のマイクロチップの輸出が停止する事になり、奪われたチップは中国に送られ、その後世界に輸出されます。

家電製品のグローバル サプライ チェーンは特に被害を受けるでしょう。

中国のスマートフォンやラップトップなどの消費者向け電子機器の輸出も、2014 年以降、世界全体の 40% 近くを占めています。

フェーズ 3: 台湾侵略成功後

中国は深刻な経済収縮に直面しながら、台湾で鎮圧、警察、再建に多額の費用をかけ「特別行政区」を立ち上げるだろう。

台湾の人々は本土に敵対的であると考えられている為に、本土の国民は、中国の資源を使って台湾を占領し、再建することに反対するかもしれません。

TSMCを含む台湾の半導体産業は、深刻な被害を受け 、最先端のマイクロチップの生産を再開できなくなるでしょう。

TSMCが戦闘中に破壊されたりしないと仮定すると、中国軍によるTSMCの接収は、急速に変化するグローバル産業におけるアドバンテージを中国に与えるだけです。

北京はまた、TSMC の従業員が引き続き会社で働き続けるように協力または強制する必要があります。

さらに、TSMCはチップ設計やチップ製造装置などを外国、特に米国に依存しています。

主要な先進国の政府は、たとえそれが最先端の製造能力へのアクセスを失うことを意味するとしても、中国支配下のTSMCに輸出規制を課す可能性が高い.。

生産をTSMCに依存している外国企業は、中国によって再建された台湾の施設が信頼できるとは考えていません。

ただし、TSMCの海外資産(アリゾナや熊本)は、台湾を逃れたTSMCスタッフの支援を受けて、おそらく他の企業に買収された後も、引き続き運用される可能性があります。

台湾占領後、中国と先進国との経済・外交関係は著しく悪化するだろう。

米軍が敗北したとしても、西側の中国に対する制裁と輸出規制は、おそらく紛争後、数カ月から数年続くだろう。

ワシントン、東京、およびいくつかのヨーロッパの首都では、好戦的な中国との通常の経済関係を再開する政治的欲求は消滅するでしょう。(ここで親中をするのであれば、それは中国共産党員です。)

西側諸国・中国双方が苦しむだろうが、中国はもっと苦しむだろう。

台湾を併合すれば、習近平国家主席に対して国民の支持が得られる可能性が高いが、習近平の求めるマルクス共産主義的な「国家建設」のコストが増大することで、中国共産党に対する国内全体の信頼が損なわれるだろう。

プロパガンダ機関は侵略に対する批判を封じ込めようとするだろうが、紛争の軍事的犠牲者の実態を隠すことは難しいだろう。ロシアの様に。

そのような侵略を正当化するような努力は、侵略の進路と結果に関する情報に自由にアクセスできる在外華僑の膨大なネットワークによって、さらに損なわれるだろう。

結論

中国が台湾海峡を越えて侵略を開始した場合、中国は大惨事になるだろう。

世界経済にも多大な影響を与えるでしょう。

米国にとって重要な戦略的課題は、北京が積極的に台湾への攻撃を考えないようにする事です。

これがCSISによる中国の台湾侵略における経済的な影響の見解です。

 

日本にとって重要な事は、中国共産党が台湾侵略を始めれば日本も同時に詰みますので、それを未然に防ぐ為に米国と共に防衛力を高め、そもそも侵略をしようとする決断を習近平にさせなせない事です。

その為に日本の憲法改正、軍事力強化は必須。

日本人が思っているよりも、日本という国が生きるか死ぬかというレベルの話です。

また、こうした紛争の前準備として中国共産党は、日本にも統一戦線などを通じて一層の情報工作を行ってきます。

こうした中国による情報工作・プロパガンダの部分にも対策を行う必要があります。

スパイ防止法など最低限の法令です。