
2025年9月24日(毎日新聞)
共同通信によれば、石破茂首相(退任予定)は、第二次世界大戦終結から80年となる来月に合わせて、戦争への参戦に至った経緯に焦点を当てた談話を発出する方針です。関係者が火曜日に明らかにしました。
発表時期は、自民党総裁選(10月4日実施、現職の石破氏が引き続き党総裁)と、月内に予定される正式な辞任の間を見込んでいるとの事です。総裁選への影響を避ける意図があるとされています。
石破氏は2024年10月の首相就任以来、「歴史から謙虚に学ぶ必要性」を繰り返し強調し、戦前の軍部による行き過ぎや、政策決定における文民統制の在り方について問題意識を示してきました。
与党が7月の参院選で大きく議席を減らした後も、石破氏は談話発出に強い関心を示し、終戦記念日の8月15日や、降伏文書調印日の9月2日には、あえて何らかの発表を行う事を控えていました。
自民党内では、保守派を中心に、戦後70年の2015年に安倍晋三首相(当時)が発表した談話によって、いわゆる「謝罪外交」は区切りがついたとの見方があり、石破氏に対しても、個人的な歴史認識の表明であっても差し控えるべきだとする声が上がっています。
一方で、連立与党の公明党代表である斉藤鉄夫氏は、石破氏がメッセージを発出する意向に理解を示し、支持する考えを表明しました。
石破氏は国連で以下のような発言もしています。
フランス国営RFIによる国連での石破氏の発言の要約。

日本の石破茂首相は、日本時間の24日午前11時過ぎ、米国ニューヨークで開催された国連総会の一般討論演説において発言いたしました。
パレスチナ情勢に関して、首相は「日本は現実的かつ積極的な役割を引き続き果たし、『二国家解決』という目標に一歩でも近づけるよう不断の努力を続ける」と強調し、合わせて国連総会や安全保障理事会を含む国連改革の拡大を呼びかけました。
中東情勢に触れる中で首相は、イスラエルがパレスチナとの「二国家解決」への道を閉ざす場合には、日本として「新たな対応措置」を講じる可能性に言及し、イスラエルに対して自制を求めました。
今回の国連総会におけるパレスチナ国家承認の一時見送りについては、日本は一貫してイスラエルとパレスチナの平和共存を目指す「二国家解決」を支持しており、「現在の情勢は極めて厳しく、深い憂慮を抱いている」との認識を示しました。
あわせて、パレスチナ国家承認に関しては「『承認するか否か』ではなく、『いつ承認するか』の問題である」と重ねて説明し、イスラエルが強硬姿勢を継続する場合には、日本が近く承認に踏み切る可能性を示唆いたしました。
また、地上戦の拡大に関しては、「人道危機を著しく悪化させるものであり、わが国として断じて容認できない。最も強い言葉で非難する」と述べるとともに、「ガザの民の苦難を看過することは断じて許されない」と強調いたしました。
日本政府は、米国との関係に配慮しつつ当面はパレスチナ国家の承認を見送っているものの、将来的な承認を選択肢として検討に含めております。
首相の演説は、主として以下の五つのテーマで構成されました。
- 国連改革
- 中東
- 核軍縮
- 北朝鮮
- 開発
首相は演説の中で、「現在の国連は、当初期待された役割を果たしているのか」と問題提起し、ロシアによるウクライナ侵略を例に挙げて安保理改革の必要性を訴えました。更に、日本の安全保障理事会常任理事国入りを視野に、「常任理事国・非常任理事国の双方の拡大が必要である」と主張し、国際社会に対して「安保理改革を断固として推し進める」よう呼びかけました。
この演説に先立ち、石破首相は米国のトランプ大統領主催のレセプションに出席し、短時間の懇談の機会を持ちました。
首相はこれまでの友情と信頼への謝意を表明した上で、「世界の平和と繁栄の実現に向け、日米同盟の重要性は今後も不変である」と述べました。更に、日米双方の利益に資する着実かつ前向きな進展が見られている事を、両首脳が歓迎している旨を強調いたしました。
国連での石破氏の発言を外務省が纏めたもの

・国連でも日本とアフリカの連携を強調
国連の役割は狭い意味での安全保障面だけではありません。国際の平和と安全の実現の為には、国連の経済、社会面での活動も不可欠であります。
日本が重視してきた「人間の安全保障」の理念は、個人に着目をし、人間の尊厳を守る概念であります。日本は、援助を通じて、特定の経済的権益や軍事的拠点を求めるものでは決してありません。ただ、純粋に、世界中全ての国と、共に笑い、共に泣き、共に汗を流したい。これが我が日本の国際協力の基本であります。
この決意の下、先月、我が日本国は、横浜において、第9回アフリカ開発会議(TICAD)を主催しました。1993年の立ち上げ以来、我が日本は、アフリカ自身の課題解決を支える姿勢を貫いてまいりました。本年の会議でも、アフリカ各国が直面する課題について、日本の技術や知見を生かした革新的な解決策を共に創りだすことを打ち出しました。
アフリカとインド洋地域の貿易・投資の活性化、アフリカの域内統合に向けて、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」も打ち出しました。
・戦後80年談話の前振りのような発言の中で、また歴史に向き合う、ナショナリズムが悪と言ってます。
いずれの国も、歴史に真正面から向き合うことなくして、明るい未来は拓けません。戦争の惨禍を決して繰り返さない。今年の8月15日の終戦記念日に当たり、私自身、そのことを、改めて心に刻むことを誓いました。
国際社会を分断させる、人類2度目の世界大戦を経験した世代の多くが、各国において社会の中心から去りました。その中にあって、国際社会は再び分断と対立に向かっています。日々、多くの命が失われるウクライナ、中東。そして、日本が位置する東アジア。これらの地域の安全保障は相互に密接に関連しております。我々がこれまで希求してきた法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、今まさに、歴史的な挑戦を受けています。
私は強く訴えたい。この挑戦に立ち向かうに当たっては、健全で強靭な民主主義をこれからも育て、守り抜くことが肝要だということを。
私は、民主主義が広がれば世界に平和が訪れるといった楽観論には立ちません。全体主義や無責任なポピュリズムを排し、偏狭なナショナリズムには陥らない。差別や排外主義を許さない。このように健全で強靭な民主主義こそが、自由で開かれた国際秩序の維持、強化、国際の平和と安全に大きく資するものと私は信じるものであります。
その土台となるのは、過去を直視する勇気と誠実さ、人権意識の涵養、使命感を持ったジャーナリズムを含む健全な言論空間、そして、他者の主張にも謙虚に耳を傾ける寛容さを持った本来のリベラリズムです。