トランプ政権がAI需要に対応する為に「数千億ドル規模」の融資で原子力発電所建設を後押ししています

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アメリカで今後急速に必要になる電力供給、特にAIデータセンターの莫大な電力需要を賄うために、トランプ政権が核発電(原子力発電)に大規模な資金援助を行います。

背景として、AI技術の普及で必要となるデータセンターの新設が加速していますが、これには莫大な電力が必要です。

市場はようやく、AIでの夢を実現するために必要なデータセンター建設の資金等の問題を誰が負担するのかという、最も重大な問題に向き合い始めています。

モルガン・スタンレーは最近、この問題は設備投資で2兆9000億ドル(450兆円弱)にも達し、そのうち少なくとも1兆ドルは債務(主に私募債)になると試算しています。

モルガン・スタンレーは、この為には2028年までに米国では新たに36ギガワット(GW)以上の発電能力が必要になると試算しており、現在の民間資金や銀行融資だけでは必要な資金をまかなうことができません。

そこで登場するのが、アメリカ連邦政府のエネルギー省ローンプログラム局(LPO)です。

ここは融資保証枠など、銀行が貸し渋るようなプロジェクトにも巨額の公的支援を提供します。

現エネルギー長官クリス・ライトは、「残された資金のほとんどを原子力発電建設へ向ける」と述べ、特に今アメリカでゼロになっている原子力発電所の新設に全力を注ぐとしています。

エネルギー長官はワシントンD.C.で開催された米国原子力学会の会議で、「我々は融資プログラム局に多額の融資権限を持っている。これらの資金の最大の用途は原子力発電所の建設、つまり最初の発電所の建設になるだろう。米国では現在、商業用原子力発電所は建設されていないが、永久閉鎖状態を覆して再開する計画や、新しい大型原子炉や小型原子炉を建設する計画がいくつかある。」と述べています。

トランプ大統領の最初の任期中、エネルギー省ローンプログラム局を利用したのは、ジョージア州のヴォートル原子力発電所の原子炉への融資のみでした。

米国が中国に追いつくための時間が刻々と過ぎているため、今後数週間から数ヶ月の間に、債務取引が相次いで発表される可能性があります。
現在、中国は29基の原子炉を建設中ですが、米国はゼロ、日本も出遅れています。

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トランプ大統領は5月に、2030年までに10基の大型原子炉の建設に着工するよう求める大統領令に署名しています。

これらの数十基の原子力発電所がなければ、AIバブルは壮絶な形で崩壊する見込みです。

一方、Alphabet、Amazon、Meta Platforms、Microsoftは、人工知能データセンターからの電力需要を満たすために、古い原子力発電所の再稼働、既存施設のアップグレード、新しい原子炉技術の導入に数十億ドルを投資。他の企業もこの動きに加わっていますが、OpenAIのサム・アルトマンが明言したように、誰もが米国政府が「最後の貸し手」になることを期待している様です。

このような支援の枠組みでは、民間が出す資本をアメリカ政府が最大「4対1」の割合で低金利公的ローンで上乗せし、リスクを国が引き受ける「最後の保険」の役割も果たします。

注目のひとつがウエスティングハウス(カナダ企業であるウラン鉱山会社カメコとブルックフィールド・アセット・マネジメントが所有している原発大手企業)への最低でも800億ドル(約12兆円)の投資計画です。
ウエスティングハウスはすでに最新型AP1000という大型原子炉を展開、しかし同社は過去にコスト超過で倒産したこともあり、小型モジュール炉(SMR)も含め複数の選択肢に国が投資する形です。

トランプ政権は先月、米国全土に原子力発電所を建設するために、ウエスティングハウスのオーナーに800億ドルを投資する合意に達しています。

日米首脳会談で発表された総額5500億ドルの対米投資の一部として、最大1000億ドルがウエスティングハウスの原子炉建設プロジェクトに充てられるという話も出ていて、三菱重工業、東芝や IHI 等の日本企業の関与も協議されています。

OkloやNano Nuclearのような小型モジュール原子炉開発業者者のより安価なプロジェクトにも期待されています。

まとめると、アメリカではAI及びその関連データセンターの爆発的な電力需要増を背景に、大規模な新規原子力発電所の建設が国策として推し進められ、トランプ政権のもとで、連邦政府が数百億〜数千億ドル規模の債務保証・融資を原子力事業に投じる計画がスタートした、ということです。