中国不動産業界の終焉を告げる中国最大の国営不動産デベロッパー万科のデフォルト危機

· 【最新ニュース】,Daily News
Section image

中国の大手不動産会社「万科(Vanke)」の資金繰りが急激に悪化し、中国の不動産市場全体が再び危機に陥りそうだと騒ぎになっています。背景には、既に破綻した恒大(Evergrande)に続いて、かつて「安全」と見られていた大手まで行き詰まり始めている、という強い不安があります。

東京建物は去年、この万科企業が貴州省貴陽市で手掛ける住宅開発計画に1億480万元(約22億円)出資しています。東京建物は2011年に万科と戦略的業務提携の契約を締結しており、万科に開発で協力。万科にとっては開発リスクの軽減に繋がると報道されていましたが、こうした出資は焦げ付きそうですね。

センス無しです。

こちらは12月2日の万科に対する報道の様子。

东方财富
深セン証券取引所:「23万科01」を場中一時売買停止
南方財経は12月2日、深セン証券取引所の公告として、「23万科01」(148380)の場中の取引価格が前日終値から初めて20%以上下落した為、本日13時33分33秒より当該債券の取引を一時的に停止したと伝えた。

大紀元
万科の2本の債券が場中で30%超下落 一時売買停止に
12月1日、万科企業股份有限公司(以下、万科)の2本の債券が場中に30%を超える下落となり、一時的な売買停止措置が取られた。同時に、万科は20億元(人民元、以下同)の債券の償還期限を1年間延長する案を提示した。

uancha.cn
元本・利息をすべて1年延長 万科20億元債券の償還延長初期案が明らかに
多くの債権者は、「22万科MTN004」債券の元本償還を延長する案そのものについては比較的高い受け入れ姿勢を示しているものの、未払い利息および新たに発生する利息の取り扱いについては少なからず不満の声が上がっている。

凤凰财经
万科20億元債券の償還期限延長案が公表
償還期限の延長を発表してからわずか5日で、万科は「22万科MTN004」の初期的な延長案を提示した。

财富号
万科と債権者の駆け引き:20億元中期票据の1年延長、一括リスク処理への布石
「不破不立」。これまで不動産業界の「優等生」とされてきた万科も、ついに…

中华网
万科はいつ苦境を脱するのか 今後3年間を試す債務圧力
今年12月に入り、万科は2本の中期票据の償還期限を迎えている。1本は12月15日に満期を迎える「22万科MTN004」で、金額は20億元。

中华网
万科の複数債券が場中に再び一時売買停止 市場の反応は強烈
11月28日、債券の償還期限延長方針の影響を受け、万科関連の債券は寄り付き直後から大幅に下落した。深セン証券取引所の公告によれば、「21万科02」「21万科04」「21万科06」「22万科02」の4本の債券が、一時的な場中売買停止措置の発動基準に達した。

Section image

万科は中国でも有数の巨大デベロッパーで、しかも深圳市地下鉄グループという国有企業が大株主にいる「実質国有系」です。

こういう会社は、いざとなれば政府や地方政府が支えるだろう、と投資家は考えていたのですが、最近、万科が12月15日に元本返済期限を迎える20億元(約283億円)の社債について、「1年返済を延長させてほしい、その1年の間の利息(3%)も支払いを先送りしたい」と債権者に提案しました。

普通なら「少しだけでも先に現金を払います」「利息だけは払います」といった“譲歩”をするのですが、そうした前払いもなく、丸ごと1年延ばしたいという内容だった為、市場参加者からは「これは想像より状態がずっと悪い」と受け止められました。

その結果、この社債の価格はほぼ額面(100に近い水準)から一気に27程度に急落し、ドル建て債も20セント台という「ほぼデフォルトを織り込んだ」水準にまで売り込まれました。

これは、投資家が「もう全額返ってくるとは思っていない」「大幅な元本カット(債務再編)になるかもしれない」と見ている事を意味します。

格付け会社S&Pも「このままでは万科の財務コミットメント(返済約束)は持続不能で、6か月以内に苦しい形での債務再編に追い込まれるリスクが高い」と警告。

万科はこれまで、深圳地鉄(深圳メトログループ)から3百億元以上の株主ローンという形で資金の支援を受け、何とかデフォルトを回避してきました。しかし、その深圳地鉄も融資条件を厳しくする姿勢を見せており、無制限に支え続ける余裕はなさそうです。

Section image

万科は、香港上場の不動産管理子会社の株式57%超をすべて深圳地鉄に担保として差し出し、「一番良い資産」を既に質に入れている状態です。

つまり、もう差し出せる余力が殆どない事を示しています。

更に、短期の銀行融資を頼もうとしても、少なくとも大手地元銀行2行に断られたと報じられていますが、これも金融機関が万科のリスクをかなり高く見ている事を示しています。

こうした状況を受けて株価も2006年レベルまで下げそうです。

Section image

こうした万科の状況は個別企業の問題にとどまらず、「中国全体の不動産市場が、ここからもう一段崩れるかもしれない」というシグナルになっている、という点で重要です。

既に恒大や碧桂園(Country Garden)など巨大企業がデフォルトや事実上の破綻に追い込まれ、債権者の回収率も10〜20%程度、あるいはそれ以下と見込まれています。そこに最後の「比較的マシ」と思われていた万科までが苦しくなれば、「国や地方政府ですら、すべての大手不動産会社を守る力も意志もないのではないか」という不信が広がります。

その不信は、資本市場だけでなく、実際の住宅需要にも影響します。

もし買い手が「買ったマンションが完成しないかもしれない」「デベロッパーが倒産して保証もあやしい」と感じれば、そもそも家を買わなくなります。

既に新築住宅の販売は数年に渡って低迷しており、中古住宅の価格も主要都市でピークから3割以上下落したとUBSが指摘している状況。

中国の新築住宅価格は、近年、全体として下落傾向にあり、2023年6月以降、主要都市の半数以上で29ヶ月以上連続して値下がりが続いています

格付け会社フィッチも、新築住宅の販売面積は更に15〜20%落ち込む余地があると見ていて、「まだ底ではない」と考えています。

加えて不安を煽ったのが、不動産関連の民間調査会社2社が、上位100社の11月の販売データの公表を見送った事です。

Section image

彼らは毎月末に売上データを出すのが通常ですが、11月分を出さず、理由も説明していません。

市場では「数字があまりにも悪くて、公表するとパニックになるからではないか」「政府の意向で控えているのではないか」と疑われています。もしそうだとすると、「本当の状況が見えない」ことで、余計に不安が募ります。

中国の家計は、資産の多くを不動産に集中投資してきました。

株や投資信託よりも、住宅・投資用マンションが「資産づくりの王道」だったわけです。

その不動産価格が更に2割も下がれば、多くの中間層の資産が大きく目減りし、消費マインドも冷え込みます。

そうなると中国経済は既に5年近く実質的な景気後退にあるのに、政府が発表している「5%成長」といった数字は現実と乖離した「幻想」に過ぎないのではないか、と強い口調で批判しています。

要するに、「恒大ショック」から数年たっても中国の不動産不況は終わらず、むしろ国が支えると見られていた万科まで危機に陥りつつある。これが債券市場の暴落、中古住宅価格の下落、販売データの“隠蔽”のような動きと重なって、中国の不動産市場と中間層の資産、ひいては中国経済そのものが、もう一段深刻な局面に入りかねないという事になります。