
3月28日早朝までに起きた出来事の概要
☢️ 核施設・産業インフラへの攻撃
3月28日早朝イスラエル軍が、イランのプルトニウム生産に直接関係する中核的な核インフラであるアラク核複合施設内のホンダーブ重水炉(IR-40)等、主要施設に対して攻撃を実施。
これにより昨夜のイラン情勢は荒れた展開となりました。

IDFはアラクの重水工場を精密誘導で攻撃しましたが、同施設は兵器級プルトニウム生産能力を持つよう設計された原子炉向けの重水を製造する核兵器開発のための重要インフラです。

ヤズド州アルダカンのイエローケーキ製造工場(核関連)もイスラエルにより攻撃を受けました(現地金曜夜)

イラン原子力庁もイエローケーキ生産施設が被害を受けたと発表しています。この施設はウランを濃縮前の濃縮粉末へと加工する重要な拠点であり、構造的な損傷を受けたものの、同庁は放射性物質の漏えいは確認されていないと国民に対して説明しているようです。イエローケーキは、原子力燃料の製造に不可欠な工程である六フッ化ウランガスへと転換されます。
☢️ アラク核複合施設内のホンダーブ重水炉(IR-40)の重要性について

ホンダーブ重水炉は40メガワット(熱出力)の重水研究炉で、アラク核複合施設の一部として建設された施設です。もともと2014年に稼働する計画でしたが、JCPOAの合意により2016年に炉心がコンクリートで封じられ使用不能にされています。 しかし、最近この施設が復旧されつつありました。
なぜ危険とされていたか?

IR-40重水炉が重要視された最大の理由は、小型核弾頭に最適な高品質プルトニウムを生産できる点にあります。イランがシャハブ3・4型ミサイルに搭載可能な核弾頭を開発したい場合、プルトニウムを使った爆縮型核弾頭がほぼ唯一の選択肢となるからです。
分析によると、この炉は年間8〜10kgの高純度プルトニウム239を生産できる能力を持ち、IAEAによればその量は年間1〜2発の核兵器を製造するのに十分な量になります。
アラク施設は昨年(2025年)6月のイスラエルの攻撃以来、稼働していません。今回のイスラエルの攻撃は復旧作業が確認されたことを受けたものです。
アルダカン・イエローケーキ製造工場の重要性

アルダカン工場はヤズド州アルダカン市の北約35kmに位置し、近隣のサガンド鉱山で採掘されたウラン鉱石を処理してイエローケーキ(ウラン粉末)を生産しています。このイエローケーキはその後ガス化され、ウラン濃縮遠心分離機への原料となる素材です。IAEAによれば年間約50トンのウランを生産する能力を持ちます。

IDFは「この施設はイラン国内で唯一、地下から採掘された原材料を機械的・化学的に処理してウラン濃縮の前駆物質として使用できる形に加工できる施設だ」と説明しており、核燃料サイクルの起点に位置する施設となります。
イエローケーキはウラン鉱石から不純物を除いた濃縮形態であり、ウラン処理の初期段階に当たる素材ですが、これをさらに変換・濃縮することで、兵器または発電用に使用できるようになります。
🔑 これら両施設を失っても核開発は可能なのでしょうか?

結論から言うと、「大きなダメージだが、核開発能力が完全に失われたわけではない」というのが専門家の見方です。
ナタンズの地下濃縮施設は繰り返しの攻撃を受けながらも地下部分は依然として無傷であり、イランは山岳部への新たな地下施設建設も加速させている事が分かっています(ワシントン・ポストの衛星画像分析)。
今回の工場破壊はウラン原料の「供給源」を断つ効果はあるのですが、イランが既に濃縮済みウランをある程度保有していること、また地下施設での濃縮活動が継続していることを考えると、短期的に核開発を完全に止める効果は限定的と見られています。
🏭 イランの製鉄所・産業施設への攻撃も実施されています。
IDFがイラン最大の製鉄所3カ所を攻撃
- 両施設はイランの軍事産業にとって不可欠であり、革命防衛隊が一部出資した施設です。
- イランの3大製鉄所(イスファハン2か所・フーゼスタン1か所)を同時攻撃しており、3拠点でイラン国内鉄鋼生産の約70%をカバーしています。
- 鉄鋼はイランの石油外収入の柱(約64.8億ドル)ですからダメージは甚大。
- 攻撃によりイラン経済に数十億ドル規模の損害が出る見込み(イランの名目GDPはおよそ3,500〜4,000億ドル規模ですから、最大で数%規模のダメージ)
- 今回の攻撃はイスラエルが主要な防衛産業目標を狙う、新たな拡大フェーズの幕開けとなる可能性
- モバラケ製鉄所:自動車・パイプライン向けの板材を生産
- イスファハン製鉄所:構造用梁・鉄道レールを生産
- フーゼスタン製鉄所:国内工場向けの原料スラブを供給
3拠点の同時攻撃により、イランが数十年かけて築いた経済的安全網が大きなダメージを受ける見通し。
爆撃を受けた製鉄所について
フーゼスターン州のKhouzestan Steel Company(KSC)
中東でも有数の生産能力を持つ鉄鋼メーカー。イラン南西部フーゼスターン州にある大規模な製鉄所です。

イスファハンズ・モバレーク・スティール


- 米国はエネルギー施設への追加攻撃を自制している一方、イスラエルは産業全体の破壊を目指すより積極的な姿勢を維持しています。
- 弾道ミサイル生産能力の低下を狙った攻撃でもあるとみられます。
- イランのタスニム通信はイランの報復は「湾岸の鉄鋼産業に限らない」とし、「より広範で深刻な報復」が計画中と報道しました。
- 米・イスラエル軍がテヘラン近郊のイラン国営衛星TV妨害局を爆撃。これによりテヘラン市民がこれまで遮断されていた「イラン・インターナショナル」などのメディアを視聴可能に。
https://x.com/i/status/2037661542972366942
これらがトリガーとなり原油先物が100ドル付近まで急騰しました。

原油先物が急騰した結果、米国株が暴落。ここまで和平交渉が進んでいたように見えていたので、それが裏切られた反動で急落したと考えられます。

3月28日早朝までに起きたその他の出来事の概要
米国・外交動向としては、米国が同盟国に「イランへの地上侵攻の計画はない」と伝達(一方で数千人規模の部隊が移動中)
ブルームバーグは「トランプは市場が荒れるたびに『停戦間近』と言って落ち着かせようとしているが、実際には出口が見えない戦争になっているのではないか」と主張。
昨夜の時点でのブルームバーグの見立ては以下です。
市場とトランプ発言の連動株が下がり原油が上がると、タイミングよく「交渉が進んでいる」「戦争は長くない」という発言が出てくる。これは意図的な市場操作に見える。
和平交渉の難しさについては、米国からの15項目提案が「イランが過去40〜50年かけて築いてきたもの(核・ミサイル・代理勢力)をすべて捨てろ」という内容だからイランが呑めるわけがない。
米・イスラエルの目標がズレていて、トランプは「エネルギー施設攻撃を10日停止」と言ったのに、イスラエルは製鉄所や核施設を攻撃。米国とイスラエルの戦争目標は最初から一致していないことも問題だ。
イランが折れるとすれば軍事的圧力によるものしかなく、現状では本格的な停戦合意はほぼ不可能ではないかという見立てを出しています。
ブルームバーグはイラン戦争開始と同時にトランプ叩き報道をしていますので、若干角度が付いた報道ですが、ある程度マーケットに影響を与えますので観察しています。
- ドイツのメルツ首相が、ワシントンとテルアビブに実行可能な戦略があるかどうか、公に疑問を呈しトランプ大統領が「大規模なエスカレーション」に向かっているのではないか、と主張しています。
- メルツはトランプとの約30分の緊張した電話会談を行ったことを明らかにし、同盟国の支持を求めるなら「事前に相談してほしい」と直言したと説明。
- メルツによればトランプは同盟国との調整を繰り返し否定し「NATOは必要ない」と発言したそうです。
- イランの高官は「攻撃しながら同時に交渉を呼びかけるのは耐えられない」と発言。
- イランはパキスタン経由で伝達された米国からの15項目の提案に対し、まだ正式回答を行っていません。
- UAEがホルムズ海峡防衛に向けて多国籍部隊の創設を働きかけています=FT
- イランは100万人以上の戦闘員を動員したと主張、革命防衛隊は支援業務への参加年齢を12歳まで引き下げ(まるで大本営発表みたいなスタイル)
- ペンタゴンはイランの原油輸出の生命線であるハールク島の射程内に地上部隊1万人の追加派遣を検討中

- トランプは4月6日までエネルギー施設破壊を10日間停止
- ロシアの石油収入が今月2倍の240億ドルに
- パキスタンはイランに対し、戦争終結に向けた米国の提案を伝達し、パキスタン、サウジアラビア、トルコ、エジプトの4カ国(主に外相クラス)での協議の開催を提案しています。
複数の湾岸諸国がドローン・ミサイルへの警戒アラートを発令
- クウェートのシュワイク港が「敵対的ドローン」に攻撃されました(クウェート港湾局)。
- クウェートのムバラク・アル・カビール港もドローンと巡航ミサイルに攻撃されたと報道されています。両港でインフラ被害が確認されたが死傷者の報告はなし。
- サウジアラビア国防省はリヤドおよび東部州上空でドローンを迎撃・破壊したと発表。プリンス・スルタン空軍基地のあるアル・ハルジ周辺への警告後、弾道ミサイル6発を探知し2発を迎撃、残る4発はペルシャ湾や空白地帯に落下。
- ドバイおよびアブダビで新たな爆発が報告されました。