ワン・ビッグ・ビューティフル法案の899条項がウォール街を震撼させています。
ブルームバーグは最近「覚えておくべき3つの数字」と呼び、ウォール街に衝撃を与えているワン・ビッグ・ビューティフル法案の899条項について報道しました。
これはワン・ビッグ・ビューティフル法案の「セクション899(第899条)」を指し、「米国に流入する外国資本に対する税制の扱いにおいて、1984年の赤字削減法や1966年の外国人投資家課税法以来で最も広範な逆風となる変更を事実上導入する」もの。
この潜在的な「核オプション」となる法案について、ドイツ銀行は「米国政府が望めば貿易戦争を資本戦争に転換する可能性を生み出す」内容であるとして警戒しています。
ウォール街では急速にワン・ビッグ・ビューティフル法案についての分析レポートが急増、単なる貿易戦争から、より“資本規制”または“資本戦争”の様相に注目が集まっています。
ラボバンクはこの899条を「トランプの報復税」と呼び、EUのデジタルサービス税(DST)など「米国の貿易要求に従わない国から流入する外国資本に対して制裁を課す為に設けられたものだ」と指摘。
以下はバンク・オブ・アメリカ(BofA)のノートで指摘されているトランプの報復税の詳細です。
ワン・ビッグ・ビューティフル法案に含まれる899条項の詳細
ワン・ビッグ・ビューティフル法案は最近下院を通過しました。
様々な減税や歳出削減策が議論される中、この新たな899条への関心が急速に高まっています。
セクション899とは何ですか?
「セクション899(不公正な外国税に対する救済措置の執行)」は、米国の事業体に対して「不公平・差別的」な課税を課している特定の国の非米国個人・法人(非米国居住者による50%超所有を含む)・政府に対して、「報復的」な課税を課す事を目的としています。
執行権限に大きく依存する既存のセクション891とは異なり、ある程度税の性質を事前に「不公正」と定義しています。
不公平・差別的な課税とは?
不公平・差別的な課税の定義には、主にデジタルサービス税(DST)、利益移転対策税(DPT)、そしてOECDが約140カ国と協議したグローバルミニマム課税率(15%)枠組み下の未課税利益ルールが含まれます。
米国はこのOECD案に反対しており、理由は米国企業がより大きなグローバルプレゼンスを持つ事で不利に扱われる傾向がある為です。不公平・差別的な課税には財務長官が「不公平」と認める他の税制も含まれます。
対象となる課税所得は?
899条の措置では、米国発信所得(利息・配当・賃貸料・ロイヤリティ=FDAP所得等)への法定税率が最大で20%ポイント(当該国が「差別的」認定されている1年ごとに5%ポイント)引き上げられる可能性があります。
さらに、BEAT(ベース・エロージョンおよび濫用防止税)の範囲と税率も修正され、米国での税負担軽減目的で外国企業への支払金控除を活用する企業を主眼とします。
証券利子には免除があるとの理解ですが、租税条約による免除を利用している非米国金融機関は影響を受ける可能性が残ります。
税収インパクトは?
899条による税収は10年間で約1,200億ドル(年120億ドル)と推計されています。
これは財政赤字全体からみれば大きな金額ではなく、米国の実効関税率では約0.4%の引き上げ、中国への関税の3%増分程度に相当します。
本当に赤字削減に効果はあるか?
現行の租税条約に影響が出れば、米国資産(特に米国債)への外国人需要が減る可能性があります。
その結果、経常赤字縮小に多少寄与しますが、金利の上昇を招き、それが税収増分を相殺する事も考えられます。
BofAのレート担当者によれば、金利が全体で20bp上昇すれば米国の利払い費用は年間で約100億ドル増加する見込みです。
上院で成立する可能性は?
最終法案に899条が盛り込まれるかどうかは不透明です。
一方で、行政権に課税権限の一部を移譲するため上院での抵抗や、外交委員会の管轄に一部該当する為(同委員会は財政調整法案の調整指示を得ていない)、手続き面の問題もあります。しかし報道によれば、899条はトランプ政権の最優先事項とされており、手続き上の課題があっても最終法案に盛り込まれる可能性は高いとの見方も出ています。
ウォール街や世界の金融機関はワン・ビッグ・ビューティフル法案を警戒していますが、米国の経済団体は続々と支持を表明。

こちらがワン・ビッグ・ビューティフル法案支持を表明した米国の業界団体です。
・全米警察友愛会(National Fraternal Order of Police)— 全国の法執行機関最大の組織 — が、法案の強力な労働者保護規定を強調し、支持を表明。
・全米独立事業連盟(National Federation of Independent Business, NFIB)のジェフ・ブラバント上級副社長は、法案の経済的繁栄へのコミットメントを称賛。
・米国設備製造業者協会(Association of Equipment Manufacturers)の政府および業界関係担当上級副社長キップ・アイデバーグ:設備製造業者は、雇用創出と国内製造への投資を促進するワン・ビッグ・ビューティフル法案を可決した下院を称賛する。
・全米レストラン協会(National Restaurant Association)のミシェル・コースモ会長兼CEO:この法律は、レストランのオーナー、従業員、そして彼らがサービスを提供する地域社会にとって大きな勝利だ。この法律には、業界の成長に不可欠な主要な税制条項が含まれている。
・国際フードサービス流通協会(International Foodservice Distributors Association, IFDA)の政府および広報担当上級副社長マラ・パーカー:IFDAは、フードサービス流通業界にとって不可欠な税制政策を含むワン・ビッグ・ビューティフル法案の下院通過を称賛する。その業界のほぼ90%は家族経営の企業である。
・独立保険代理店およびブローカー協会(Independent Insurance Agents and Brokers of America)のネイサン・リーデル上級副社長:下院は、何千もの中小企業のオーナーとその顧客に経済的な確実性をもたらすために、非常に大きく前向きな一歩を踏み出した。上院がこの法律を進めるために取り組むことを強く求める。
・アメリカ農業団体連合会(American Farm Bureau Federation)のジッピー・デュバル会長:農業団体連合会は、農業法案プログラムを近代化し、米国の小規模農家や牧場主にとって有益な重要な税制条項を延長および改善するH.R.1の下院通過を称賛する。
・米国商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)のニール・ブラッドリー執行副社長:下院は本日、明確なメッセージを送った。米国の労働者と企業は、永続的な税制上の救済を望み、必要としている。
・アメリカ航空協会(Airlines for America, A4A):A4Aは、連邦航空局(Federal Aviation Administration)の航空交通施設、システム、インフラストラクチャの近代化に125億ドルの重要な投資を含むワン・ビッグ・ビューティフル法案を可決した下院を称賛する。
・全米畜産牛肉協会(National Cattlemen’s Beef Association)のバック・ウェルベイン会長:牛農家や牧場主は、議会が牛の健康に投資し、海外の動物病に対する資源を強化し、災害や略奪から回復している生産者を支援し、将来の世代のために家族経営の農場や牧場を保護する税制上の救済を可決することを必要としている。幸いなことに、この調整法案にはこれらの主要な優先事項がすべて含まれている。法案を支援出来た事を誇りに思う。
・Uberのダラ・コスロシャヒCEO:DCからのビッグニュース—下院はトランプ大統領の税制法案を可決し、チップへの非課税(No Tax On Tips)が完了まであと一歩となった。
・全米製造業者協会(National Association of Manufacturers)のジェイ・ティモンズ社長兼CEO:本日下院でこの歴史的な法律が可決されたことは、アメリカ全土の製造業者にとって大きな勝利を意味する。
・アメリカ石油協会(American Petroleum Institute)のマイク・サマーズ社長兼CEO:アメリカのエネルギー支配を回復させるための『ワン・ビッグ・ビューティフル法案』を可決した下院を称賛する。
・全米卸売業者・流通業者協会(National Association of Wholesaler-Distributors)のエリック・ホプリンCEO:ワン・ビッグ・ビューティフル法案を可決した下院を称賛する。
・全米納税者同盟(National Taxpayers Union)のブランドン・アーノルド執行副社長:下院で可決された法案には、成長に焦点を当てた税制上の救済と、長年必要とされていた支出抑制に向けた重要な第一歩が含まれている。
・全米不動産業者協会(National Association of REALTORS)のシャノン・マクガン執行副社長:勤勉な家族を支援し、不動産経済を強化するこの税制改革法案において、下院のリーダーシップがこの重要な一歩を踏み出したことに感謝する。
・全米電気工事業者協会(National Electrical Contractors Association)のデビッド・ロングCEO:これらの条項は、電気建設業界の現実的なニーズを認識している。
・アメリカホテル・ロッジング協会(American Hotel & Lodging Association)のロザンナ・マイエッタ社長兼CEO:これはメインストリートの企業にとって勝利だ。
・全米外国貿易評議会(National Foreign Trade Council)のアン・ゴードン国際税制政策担当副会長:スミス委員長と歳入委員会およびスタッフの皆様、そして米国税制に関する重要な法律を現実のものとするために尽力されたジョンソン下院議長と指導部の皆様に改めて感謝申し上げます。
全米の業界団体は絶賛です。