J.P. Morganによる中東状況や関税を踏まえた今年後半の経済見通し

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これはJ.Pモルガンのエコノミストによる2025年後半の世界経済見通しの要点を纏めたものです。

2025年、世界経済は3つの大きなショック(経済的な衝撃)を受けています。

  1. 米中貿易戦争などによる関税の引き上げ
  2. サウジアラビアによる石油供給増加
  3. 中東戦争勃発(イランなど)による地政学リスクの高まり

主なポイント

米中貿易戦争は現時点で世界経済成長を0.6%分押し下げると見ている

米国が中国やその他国に対して関税を拡大。その直接的効果だけで2025年の世界GDP成長率を0.6ポイント(特に25年後半に集中)押し下げると見ています。

  • この影響は主に25年後半に出て、年率1%以上の成長鈍化要因となる。
  • サウジアラビアの供給増が下支え要因となる。

OPECプラス(主にサウジ)が石油供給を増やした事で、上記貿易戦争の負の影響の半分程度が相殺されると分析。

  • 貿易戦争と石油供給増が重なる事で、原油価格は50ドル近辺まで下落するというシナリオがベース(JPMのコモディティチームの予想も50ドル)。
  • しかし、中東戦争リスクで価格上昇&景気下押しリスクが再浮上

ジオポリティカルリスク(イランからの供給停止など)が現実化すると、原油価格は一気に100ドルに近づくリスク。

  • 特にイランの原油輸出(180万バレル/日)が消えると、年率換算で世界GDP成長率に2ポイントの下押し=景気後退(リセッション)の可能性。
  • サウジの供給増や米国の戦略備蓄放出などである程度は和らぐ可能性も。ただし、株式や他の資産クラスにもリスクプレミアム(不安による価格の上乗せ)が波及し、影響は更に大きくなる恐れ。
  • 尚、他のセクターへの間接的影響、リスクセンチメントの悪化などを含めると、インパクトはこれ以上になるリスクも。
  • 要するに「米中貿易戦争→サウジ増産→中東有事リスク浮上」という三重のショックを2025年の世界経済は受けており、後半にかけて成長鈍化や景気後退リスクが著しく高まっている、と見ています。

市場への供給増加(OPEC増産など)について

  • OPECなどが意図的に石油の供給を増やす事で、価格が下がります。米国の石油生産者には打撃ですが、世界中のエネルギー消費者にとってはプラスです。
  • J.P. Morganチームは2025年後半に供給増加を予想し、それが2024年第2四半期のブレント原油価格を下押しし、消費者の購買力を高めていると指摘。

「実際の戦争」が齎す原油価格リスクについて

  • イスラエルとイラン間の戦争開始でエネルギー市場に不安が生じ、原油価格が一時高騰しました(供給が途絶するリスクが上乗せ)。
  • ただしインフラへの直接的な被害はまだない為、今後も大きな混乱は起きないと見ています。
  • 例えばBrent原油が$75/bbl水準が維持されると、今後3ヶ月間、世界の消費者物価(CPI)上昇率を年率で最大2%ポイント押し上げる影響もありうると試算。

需要・供給ショックの「弾力性分析」

  • 簡易的な均衡モデルを使い、需要ショックや供給ショックがGDP成長率や原油価格にどれだけ影響するかを数値で示しています。
    • 「世界GDPが1%分プラス」→原油価格は25%上昇(需要増=価格高騰)が見込まれるが、意外にも新興国(EM)が特に強い成長になる。
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  • 一方、「原油供給が1mbd(100万バレル/日)減少」→原油価格は37%上昇するが、経済成長が減速する事で最終的な価格上昇は25%に抑えられる(=需要減の効果)。

最終的なショックの影響

  • 今年の「貿易戦争ショック」で世界GDPが0.6%押し下げられるが、OPECの供給増(+0.4%)作用で、純粋なGDPへの足かせは0.3%程度になる見通し。
  • もしこれらの効果が2025年後半に出るなら、半年間で世界の成長率を年率換算で0.6%分押し下げるインパクトとなる。
  • 石油価格に関しては、貿易戦争による需要減で-10%、OPEC供給増で更に-15%と、合計で-25%分値下がりし、2024年第4四半期の$73/bblから$55/bblになる見通し。

シナリオ分析

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  • Trade warだけの場合、グローバルGDP(国内総生産)は0.4%下がる。
  • OPECが供給増やす場合(原油供給+0.6百万バレル/日)、原油価格は10~15%下がる一方で、GDPへの正の影響も一部相殺される。
  • 中東戦争リスクで原油の供給が0.6mbd減少した場合、原油価格は15%上昇、グローバルGDPは0.4%下がる。
  • これらのショックがすべて重なった場合、グローバルGDPへの影響は合計で約0.6%、価格も元の水準($66/bbl)程度になる可能性。